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![]() ![]() ダイナパワー・パーフェクトチャージャー 〜 Dynapower Perfect charger 〜 を調べる * 記事を掲載 2008/3/9
ダイナパワー(輸入元・株式会社セイキ)の『パーフェクトチャージャー』の持込調査依頼がありましたので、充電・放電に関する性能などについて調べてみました。 お貸し頂きましたあろは様、ありがとうございます。
![]() 今回お借りしたものはSCH-808F、とりおんのシールが貼られたオレンジ色の物です。 ATLAS・モロテック等でも販売されています。型番は各販売会社で違うようです。 基本性能は ● 単四または単三を1〜4本同時充電可能 (別サイズ、残容量違い電池の混載可能)
● ニカド充電池・ニッケル水素充電池に対応● 液晶表示で充電・放電状況が確認可能 ● 急速充電、ピークカット・ヒートカット機能 (英語の説明には安全タイマー機能も…) ● 単四・750mAhバッテリーを1時間急速充電 ● 不良セルの告知機能 ● 低電圧セルの修復機能 ● 自動で放電→充電するリフレッシュ機能 ● AC電源/12Vシガーケーブル/USBケーブルの3種類の電源対応 と告知されています。 尚、「ダイナパワー・パーフェクトチャージャー」と同一名の充電器ですがSCH-808Fになる前のBP-C60M(同じくあろは様所有の旧タイプ)とは基板写真を見る限りは中身は基本的に同じで、PSEマークの取得に合わせて型番が変わったと思われます。 従来品はACコードが別売(自己責任で使用する事!)でしたが、PSEマーク取得後には同梱されています。それに伴いAC→USBアダプターは無くなりました。 ● 液晶表示 ![]() CHRGE REFRESH と動作モードを表示する文字、右側には電池マークが4本ぶん並んでいます。 ● モード切替 ![]() もう一度押すと「充電」モードに戻ります。 リフレッシュの場合は放電後に自動的に充電が開始されます。 右上のスリットは「電源」表示ランプ(LED)で、電源が入っている間は常に点灯します。充電中の表示ではありません。 ※販売代理店向けOEM製品毎にロゴマークやボタンの印刷、またロットによる違いで見た目が異なる場合があります。 ● 充電モード [CHARGE] ![]() パッケージによると各充電時間は次のようになっています。 ![]()
※ これはDC12V or AC入力の場合です、USBの場合は後述の長時間かかります
![]() この表からは一般的な充電器のような電池本数による充電時間の変化(1-2本時と3-4本時が異なる)は無いようです。 また電源関係の記載には ![]()
![]() とありますので、電池タイプ(AA/AAA)による充電電流切替等も無いのでしょうか? 回路上はどうなっているのかは後に調べます。 ● リフレッシュ放電モード [REFRESH] ![]() リフレッシュ放電について、何Aで放電しているとか、何時間かかるという記述はいっさいありません。 回路上はどうなっているのか、放電電流や時間は後に調べます。 ● 電池ボックス ![]() −側の電極は単三・単四でそれぞれ別となっていて、+側は共通です。但し基板上では−側の電極は単三・単四共に繋がっています。単四を入れた時に自動検知して、充電電流を可変する機能などは無いようです。 単三と単四を混ぜて充電する事も可能です。 ● 電源コネクタ ![]() ACケーブル用は本体左側面の上のほうに、DC/USBケーブル用は本体右側面の上のほうにあり、ケーブルを挿すと写真のようになります。 電源ケーブルが横に伸びるので、充電器を複数台並べるとか、ケーブル側に横に何か別の機器を置くことがちょっと困難になります。 実験中も「邪魔〜!」となる時がしばしば(^^; これが上の方に向いていればまさに見た目・使い勝手は「パーフェクト」だったのに・・・ ちなみに可動式の「フタ」もその存在意義や使い勝手は微妙です。 手前に開くので電池を入れたり出したりする時に手前側にスペースが必要でちょっと邪魔かも。
中の基板はこのような感じです。
![]() ● 温度検出センサー ![]() 電池の−極側の中央に一個サーミスタが付いています。 この位置だけでは、両端の電池が過熱した場合に正しく検知できるのかかなり疑問です。いくらフタが付いているといっても隙間だらけですし・・・ 不良電池の場合、4本セットで使用していた電池がまんべんなく過熱するとか、そういう想定なのかもしれません。 プラスチックケースの中で空気温度を測っているタイプの温度検知センサーでは電池の温度をきめ細かに計っているとは言いがたいので、あくまで非常用の安全装置という位置付けなのでしよう。 この充電器で電池を2本だけ充電するような場合は、中央の2スロットに電池を入れたほうがよさそうです。(あくまで過熱するような電池の場合…) ● 充電・放電回路 ![]() 各電池のまわりの充電・放電回路がどうなっているのかを見てみましょう。 細かな回路図は省いて、ブロック図で示します。 ![]() 各電池は全て直列に繋がっています。 各電池に切替スイッチ回路が付いていて、充電の際、また放電の際にその電池に対して充電/放電をするか/しないかを選択できます。 各電池の電圧は個別に測定されていますので、電池が入っている/入っていないや各電池の状態は全て個別に判断される方式で、充電時の回路方式は直列式定電流充電ですが充電器の機能としては個別充電として振舞います。 「リフレッシュ」モード時の放電に関しても全部の電池が直列回路で接続されて放電されます。 この場合も放電する/しないは個別に管理されますので、放電が早く終わった電池が放電を続けて過放電になる事はありません。 詳しくは次の項でモード別に説明します。
スロットは4箇所ありますが、自由にな本数、単三と単四の組み合わせも自由に入れられます。
単三と単四電池の種類の識別装置・回路はありませんので、どの電池に対しても同じ電流で定電流充電します。 ですのでカタログスペックでは1000mAで充電して800mAhの単四電池の場合は約1時間、2000mAhの単三電池の場合は2時間強の時間になります。(空からの場合) ● AC100V/DC12Vで充電 ![]() 電池を最大の4本セットした場合の充電制御パターンです。 ![]() タイミング図でわかるように、約1.54秒充電しては約0.46秒休止のパルス充電を行っています。約2秒周期で充電電流レートは定電流値の約77%です。 実測では定電流値は920〜1020mA(電池の本数・またDC/DCコンバータのパルス等で多少変動)と約1Aです。×0.77すると実際にバッテリーに充電される電流値は770mAとなります。 裏蓋・仕様には「OUTPUT: AA/AAA 1000mA」と書かれていますが、定電流回路の定格が1000mAなだけで、パルス充電の為に実際には770mA充電となっています。 どれかの電池が満充電になった場合はそのスロットの制御がOFFになり、その電池には充電電流は流れません。直列接続から外されるわけです。 説明書には書かれていませんが、全ての電池の充電が終了するとトリクル充電モードに切り替わります。 ![]() 約1.21秒中に0.04〜0.05秒のパルスで微弱電流充電(約33mA)しています。 AC100Vからのスイッチング電源、またはDC12V入力の場合は4本の直列に必要な約7V以上の電源電圧が確保できますので4本の直列充電でも十分に1000mAの充電電流を流せます。 しかしUSB 5Vの入力ではその為のじゅうぶんな電圧が得られません。 USB 5V→12Vの昇圧回路なども入っていませんので、USB 5V入力の場合は4本の直列充電は無理という事になります。 ではUSB 5V電源の場合はどのように充電しているのでしよう? ● USB 5Vで充電 ![]() 電池を最大の4本セットした場合の充電制御パターンです。 ![]() スロット4〜1まで各0.6秒ずつ順次充電し、0.27秒休止時間を挟んでまた次の周期が始まります。(休止時間は初期値) 充電電流はAC100V/DC12Vの時とほぼ変わりありませんので、電池4本の場合は大雑把に言うとUSB 5V入力の場合はAC100V/DC12Vの場合の約4倍の充電時間がかかることになります。 AC100V/DC12V入力の場合は電池本数が少なくても同じタイミングで直列本数だけが変わりましたので、電池一本に流れる充電電流や充電時間は電池本数には関係無く一定でしたが、USB 5V入力の場合は電池の本数が変わると次の図のようにタイミング・充電電流・充電時間が変わります。 ![]() 1サイクルの区切りで休止時間を挟んでサイクル中は#3・4の電池に交互に充電していますので、電池2本の場合はAC100V/DC12Vの約2倍の時間がかかります。 図で示しても変化がわかりにくいので図は省略しますが、USB 5Vの場合充電を始めてしばらくすると休止時間が短くなります。 休止時間中に電池を入れていないスロットに新たに電池が入れられたかのチェックを行っているようですが、一定時間後からはその時間を少なくしてチェック頻度を減らし、少しでも休止時間を短くして充電に使う時間のほうを多くするようタイミングを改善するようです。USB 5V入力では充電時間がかかりすぎる為、少しでも早くしようという努力がうかがえます。 USB 5V入力の場合、すべての電池の充電が完了した後のトリクル充電はありませんでした。 ● トリクル充電 ![]() 上のほうで書きましたが、AC100V/DC12V入力の場合はすべての電池の充電完了後にトリクル充電に移行します。 USB 5V入力の場合はトリクル充電はありません。 ● 液晶表示 ![]() 液晶表示の「電池マーク」は厳密に電圧を数値表示しているわけではありませんので、あくまで進行の「めやす」としての確認用です。 内部では判断電圧を決めて「何Vなら表示は何段階目」などの処理をしてるのかもしれませんが、表示ロジックが公表されているわけではありませんので使用者からすれば「めやす」程度です。 しかし3段階のめやすでも有ると無いとでは大違いですから、電池マーク表示の利便性は高いと思います。 ● 不良電池判別・リペア機能 ![]() 0.5V未満の電池をセットすると「電池マーク」が点滅してその電池が充電できない事を表示しました。 かなり劣化した電池で電圧が0.5〜1.0V程度の電池をセットしてみましたが、通常の充電を開始して特にリペア機能(小電流での試充電など)というような動作は確認できませんでした。 通常充電電流でも1.0V程度にならないような電池の場合は何か別の動作(リペア機能)が働くのかもしれませんが、今回のテストでは確認はできませんでした。 三洋NC-M58、松下BQ-390等で確認された「劣化が進んだ電池を判定した時に充電電流を下げて充電を試す」ような機能(マニュアル等には記載されていないリペア機能)も今回お借りしている間にはSCH-808Fには有るのか無いのかも確認できませんでした。 試した電池のうち、三洋NC-M58、松下BQ-390では充電開始数秒で不良と判定される「劣化したエネループ」もSCH-808Fは通常通り充電します。 電池を不良判定する基準が大手電器メーカー製の充電器よりかなり甘いようです。
リフレッシュ放電モードでは充電電源はOFF、放電回路の[DISC1][DISC2]信号をそれぞれ必要に応じてONにしてFETによるスイッチを導通させ、放電抵抗を経由して電流を流して放電させます。
[DISC1]信号をONにした場合、1組の放電抵抗を通じて放電されます。 [DISC2]信号をONにした場合、2組の放電抵抗を直列にして放電されます。(抵抗値はDISC1の二倍) 電池電圧は1〜4本の場合の4種類があるわけですが、放電抵抗の切替は2種類しかありません。 実際の動作は ○ 電池が1本または2本の場合は[DISC1]信号をON (抵抗値小) ○ 電池が2本または3本の場合は[DISC2]信号をON (抵抗値大) というふうに、放電が必要な電池の本数(合計電圧)によって放電抵抗を2種類から切り替えています。 ここで言う本数は充電器にセットしている電池の本数そのものではなく、各電池の電圧を測定して「まだ終止電圧以上の電圧で、放電が必要な電池」の本数です。 放電回路も電池は直列に接続されていますが、各電池の電圧を個別に測定して正しく「個別管理」しています。 それでは放電する電池の本数と放電抵抗の組み合わせから放電電流の相関を表にしてみましょう。
あらあら、放電する電池の本数によって最大2倍の電流値の差があります。 単純にセットする電池の本数では無い事は既に説明しましたので、複数本を放電させた場合は先に放電が終わった電池が出て実際に放電する電池本数が変わると放電電流も変わってしまいます。 これではパッケージやマニュアルに「放電電流xxx mA」「放電時間はAAAでxx時間」等と表記する事はできませんね。 さて、直列回路に放電抵抗2種類だけというアンバランスな放電機構ですが、実際に放電をする際にはあまり気にすることも無いでしょう。 ミニッツ等で電池を4本同時に放電(リフレッシュ)させる機会がほとんどだと思います。その場合、 (1) 4本全てに電気があり、4本放電 → 電流は [2の値] (2) 1本が先に終わって、3本放電に切り替わる、3本放電 → 電流は [1.5の値] 1.5の値は2の値とあまり変わらないので気分的には同じ程度と考える! (3) 2本目が終わって、2本放電に切り替わる、2本放電 → 電流は [2の値] ここでまた最初と同じ2の値に戻る (4) 3本目が終わって、1本放電に切り替わる、1本放電 → 電流は [1の値] 1の値と放電電流は最初の値の半分になってしまい、最後の一本の残りは 「ゆっくり放電」になるが、この時点では最後の一本の電池の中にも もうほとんど電気は残っていないので、ゆっくりでもすぐに終わる(だろう) このように、変化はしますが実感としては電池本数がどの状態でもほぼ同じ放電レートで放電されていると思って良いでしょう。 最初、放電特性や終止電圧を調べる為に電池一本だけで放電してみたら、無茶苦茶時間がかかってしまいました(笑) 放電時のタイミングは次の通りです。 ![]() チェックサイクルが終了すると放電サイクルとなり、約1.64秒間放電します。放電回路はその際の電池本数に合わせて[DISC1]か[DISC2]が選択されます。図では電池4本ですので[DISC2]が選択されています。 1サイクルの最後(冒頭?)に0.2秒の休止期間が入ります。電池を途中で抜いたり、空きスロットに新たに電池を挿した場合はここでチェックされています。 電池一本に関して着目すると、「0.06秒の1の値の放電」+「1.64秒のnの値の放電」(nは電池本数による異なる)という約1.7秒間の放電と0.2秒間の休止+電池本数により最大0.06×3秒の休止(他電池の終止電圧チェック時間)を繰り返しています。 丸め込んで2秒サイクルで1.7秒間放電だとすると放電レートは×0.85です。 放電抵抗は22Ωを1組3並列で7.33Ω、定電流回路用の0.1Ωもと通るので[DISC1]の場合合計7.43Ω、[DISC2]の場合14.76Ωです。 上の表の「1の値」の場合は約162mA、「2の値」の場合は約323〜325mA程度の電流が流れます。(電池一本が1.2V時) それに放電レートの×0.85を掛けると「1の値」の場合は約138mA、「2の値」の場合は約275mA程度の放電電流となります。 電池4本を入れた時の放電電流がこのリフレッシュ回路の標準的な電流値だとすると「約275mA放電」程度と言えますので家電用充電器のリフレッシュ機能の電流値とほぼ似たようなものです。 ラジコン用の「放電器」と比べると弱い放電電流ですので、SCH-808Fのリフレッシュ機能だけで電池を放電させようとするとかなり時間がかかります。 他に放電器を持っていなくて仕方なくこれ一台で、という場合を除いてはできれば他のもっと放電電流の大きな放電器で予備放電をしてほとんど終止電圧近くまで放電をした後に、SCH-808Fでリフレッシュモードにして正しく終止電圧まで放電してから充電を開始するような使い方のほうが速くて良いかもしれません。 ● 放電終止電圧 ![]() 気になる放電を終了(停止)させる電圧は、SCH-808Fの場合ちょうど1.0Vでした。 放電電流が少ない為、内部抵抗での影響値を考慮しなくても良いのでニッケル水素充電池の終止電圧1.0Vにあわせて設計されているようです。 先にも書きましたが放電終止電圧まで放電した電池は放電サイクルから外されます。そのまま続けて過放電することはありません。 回路の構成上、先に終わった電池から充電をはじめるというわけにはゆきませんので、全ての電池が放電完了した後に一斉に充電に切り替わります。 ● 放電進行中の電池マーク表示 ![]() 充電の際の表示と同様に、内部で電圧などの基準から3段階の液晶表示をします。 「めやす」としては有意義です。
充電時にはセットした電池に関係無く均一に約770mA(AC100V/DC12V時)の充電を行うのは、ラジコン用途で単四電池を使用する人にはかなり有意義でしょう。
通常は単四電池では安全を考慮して0.5C以下の充電レートで充電を行うものなのですが、SCH-808Fではそういう考慮無しに単四でもそのまま770mAの電流を流してしまいます。 ラジコン用途で「秋月充電器を改造して単四電池に単三の電流で充電する」「単四→単三アダプターに単四電池を入れて単三ソケットで充電する」などの涙ぐましい努力をしている方もいらっしゃるようですが、SCH-808Fでは何の工夫も改造も無しで単四電池を770mA充電できます。 単四電池では1C(=容量mA)以上で充電すると過熱や破裂するトラブルが起きやすいという注意書きがラジコンショップや通販HP等でよく書かれていた時期がありましたので(最近は見ない?)、700〜800mAh程度の単四バッテリーをこの充電器で充電する場合は発熱・破裂などの異常が起きないかよく監視しながら充電しましょう。 充電時のパルス間隔など、リニア充電よりも電池に与えるダメージが少ないので1C充電程度でも単四電池を破裂させずに充電できるとか、何らかの確証があってこの充電器の設計者は単四でも電流値を変える事はせず、また輸入・販売元も特に事故やトラブルが無い事を確認して販売に至っているのだとは思います。 しかし電池の種類・銘柄によっても充電耐性は違いますからこの充電器で単四電池を充電する際には注意するに越した事はありません。 リフレッシュ放電の際の電流値、カット電圧についてはごく一般的な小型充電器内蔵の放電回路といった感じで、特に悪いものではありません。 電池のコンディションを整える為に放電→充電→放電→充電のようにフル充電&放電をするような場合にはかなり放電時間がかかります。急ぐ方は他の放電器との併用が良いでしょう。 たいていはラジコンショップのミニッツコーナーで売られている「ダイナパワー・パーフェクトチャージャー」ですが、ミニッツ用に単四電池を短時間で充電したい人向けには確かに時間の面で一般的な家庭用充電器よりアドバンテージがあります。 ![]() 液晶表示で3段階電池マークを表示してくれるのも、個別LEDがあったり単純に1個しかLEDの付いていない充電器と比べると変利さと見た目の「楽しさ」があり、充電を楽しく行うことができます。 ボディもコンパクトですし・・・外形上の唯一の欠点の電源コードの挿し込み位置さえ気にならなければ・・・
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