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![]() ![]() 新タイプNi-MH充電池の性能テスト * 記事を掲載 2008/3/21
* 三ヶ月自己放電グラフを追加 2008/6/24
* 半年自己放電グラフを追加 2009/1/11
エネループや松下HHR-3MPSの発売以降、各社から「自己放電が少ない」「買ってすぐ使える」「1000回繰り返し使える(*)」などの従来ニッケル水素充電池を改良した新タイプ充電池が発売されています。 今回はその中からいくつかをテストしてみましょう。 ※ 1000回はJIS C8708試験での電池の性能を評価する基準で、実際の家庭使用とは異なります。
今回テストを行ったのは以下の電池です。
● 測定方法
測定には自作「放電器Type-G」と「データロガー(K8047)」を接続しPCでデータ記録を取っています。 ・500mA 定電流放電 (懐中電灯等) モードで行います。 ※ 放電実験は2008年3月。室温20度±1度の環境で行っています。 ※ 10秒毎に記録したデータを1分毎に平均化した後にグラフを描いています。 ※ 測定精度は3V/8bitです。グラフの縦軸は1〜1.5Vレンジですので多少カクカクして見えます。 ※ 充電にはNC-M58を急速充電モード(倍速では無い)で使用しています。 ※ 満充電グラフは各電池の満充電から6時間後に放電を開始しています。 ● 各グラフの測定条件 ● 購入直後(未充電) 500mA放電 三洋eneloopや松下HHR-3MPSのように「買ってすぐ使える」電池かどうかのテストです。 通常のニッケル水素電池では自己放電の為に製造から時間が経っていると工場出荷時に(テストの為に)充電されていても自然に容量が抜けています。 初回(購入後無充電での放電)はもし公称容量使えなくても不良品ではありません。 但し、購入して最初に電圧を測って1.0Vを下回っている電池は要注意です。自己放電で過放電して電池の性能が劣化している場合があります。 バルク品(パケージ無し、バラ売り)を買う場合、もし店頭で電圧を測って買える場合はしっかり電圧のある電池を買いましょう。 電圧の低い電池は充電器によっては不良電池と判断して(まだ使えるのに)充電できない場合があります。 ● 満充電からの500mA放電 購入直後放電の後、2〜3回充電と放電を繰り返し休眠状態などを解消した後に電池が新品時の満充電容量・電圧などを調べます。 NC-M58で565mAで急速充電します。倍速充電ではありません。 満充電後、充電器から電池を外して6時間放置します。 朝充電完了して、外出先でお昼頃に使用するような用途を想定しています。 ● 500mA放電時の容量 各電池で500mA放電時の維持時間で容量を測定しています。 JIS規格等では「0.2C放電」での維持時間で容量を測定しています。2500mAh電池の場合0.2Cでちょうど500mAとなりますので、今回の電池群の平均2000mAhでは本来は400mAでの放電がJIS試験に近い値となるはずですが、他の電池実験とあわせる為に500mAで放電しています。 「1mAでも違う」「1秒でも違う」と非常に厳密に言えば上記の通り電池容量に対してきっちり0.2Cで測定しなければ「容量について語ってはいけない」という事になるかもしれませんが、経験上はこの程度の範囲であれば数値上は放電電流が違ったから他社電池との性能比較をする上で目にみえるような違いは見られない事がわかっています。ですので1300〜2750mAhの各電池に対して500mAでの使用条件での「同一の使用条件での比較」が成り立つものとして『500mAh放電時容量』を表記しています。 ● 充電条件 充電には三洋電機のNC-M58を使用しています。 現在市販されている充電器の中で入手性も良く、エネループセット品なども発売されて多くの方が利用されているだろうと、日常的な使用シーンを想定しての充電を行っています。 電池メーカーが行っている性能試験の充電電流とは異なりますが、メーカー試験と同一にするには電池毎に充電電流を変えて充電しなければなりません。しかし日常的に使用する充電器にはそのような機能を持つものは無く(ラジコン用などの特殊な高機能充電器は除く)、充電電流は一定で満充電を検知して充電時間を変えているものがほとんどです。今回の比較は電器店で売られている市販の充電器で充電する一消費者の使用シーンでの実験としています。 尚、NC-M58など三洋電機の充電器は独自のピークカット方式で満充電を検知して充電を終了する為、0.1C充電で16時間も電流を流し続ける充電での測定方法より少し少ない容量で充電を完了します。 しかしながらこの充電容量が実際に私達がNC-M58で充電した電池で使用できる容量ですので、市販の同一の充電器で充電した電池同士の実生活上での使用可能容量の比較実験であることには十分ご留意ください。 ● 自己放電テスト 満充電から10日後、一ヶ月(31日)後、三ヶ月(92日)後、半年後にそれぞれ500mA定電流放電をして、満充電直後(6時間経過後)のグラフと比較します。 電池の保管は常温、期間は2008年2月から3月の一ヶ月間、3月から6月の三ヶ月間、6月から12月の半年間。室温は一ヶ月期間は10℃〜21℃の間、三ヶ月期間は15℃〜28℃、半年期間は18℃〜34℃の間で昼間・夜間で変化しています。特殊な恒温装置は使用していません。ごく普通に家庭で保管する状態です。
![]() 「すぐに使える」という点を強調している名前なのでしょうか、Ready=「準備OK!」? ▼グラフをクリックすると拡大表示
「買ってすぐ使える」か?については約1250mAh使用できました。電圧は低いですが、容量としてはTyp.値の半分以上ありましたので、「買ってすぐにフル容量使えるなんて思っていなければ…使える」というレベルです。 しかし充電して使用できる実容量は全然Typ.値の2200mAhなんて達成できず、2000mAh弱しか充電できませんでしたので容量表記については少し鯖を読んでいるようです。 また10日後・一ヶ月後、そして開封直後(工場出荷から放置)のどのグラフでも冒頭部が落ち込んでいます。これは不活性になりやすい電池だという性格が読み取れます。休眠状態がひどくなると、充電してからしばらく放置した後に使用しようとすると、容量はまだあっても出力電圧が低くて一部の機器では電池切れマークが出たりする原因になります。 10日後・一ヶ月後のグラフには大きな違いはありませんので、自己放電特性は一般的なニッケル水素充電池より改善された感じはします。 充電直後とそれらの間に開きがある為、充電直後は充電時に印加された電圧の影響で少し電圧が高いですが、この電池本来のポテンシャルは10日後・一ヶ月後のグラフの状態が正しいようです。 三ヶ月後のグラフは目も当てられません。 容量も減ってしまっていますしバラつきも大きく、不活性による電圧低下もあって三ヶ月寝かせた後ではすぐには使いたくは無いですね。この電池は一ヶ月程度放置した場合は再充電してから使いましょう。 どのグラフの線を見ても、今回比較した他電池、また他の一般的なニッケル水素充電池より放電電圧も低い目のようです。 発売当初は店頭に「エネループと同じ!」という内容のPOPが貼られているのを私の友人が目撃していましたが、私が購入した時点ではそのようなPOPは剥がされていました。 「エネループと同じ!」を信じて購入されて保管や放置をされている方は、必ずご利用の前に充電してから使いましょう。そうすれば普通にバラつきの多い中華電池程度には使用できそうです。 ● 半年後グラフ (追加しました) ▼グラフをクリックすると拡大表示
三ヶ月後でもかなり放電してしまっていましたが、半年後には2本のうち1本(実際のテストでは4本中2本)が1.0Vを下回っていた為に放電テストができませんでした。eneReadyは一ヶ月以上放置したら、使用前には必ず充電しましょう。 また、半年以上放置しないようにしないと自己放電で低電圧状態に陥り、性能が低下してしまう可能性があります。
![]() 2本入りと4本入りの2種類販売されていましたが、今回は2本入りで購入です。 ▼グラフをクリックすると拡大表示
「買ってすぐ使える」か?については約800mAh使用できました。本来の容量の1/3程度と「買ってすぐ使える」かどうかについてはかなりプッシュが弱いと思います。 充電して使用できる実容量はMin.値の2000mAh以上を実現し、Typ.値の2100mAhに迫る容量まで充電できています。表記通りの容量で使用できます。 10日後・一ヶ月後のグラフの差が非常に少なく、自己放電の少なさがみてとれます。 この電池の場合も充電直後とそれらの間に開きがあるのは、充電直後は充電時に印加された電圧の影響で短期間だけ少し電圧が高いことを表しています。 日本ではJTTが輸入・販売していますが、製造元はBP製です。 自己放電特性は6ヶ月→85%、一年→80%。 データシートによるとサイクル回数は「500回」だそうです。エネループのように1000回耐久では無いようですね。 この電池のみ三ヶ月後のグラフは250mAの定電流放電での試験となりました。 いや・・・単に何かの拍子に放電器の設定電流が少し前に行ったアルカリ電池のテスト電流の250mAモードに切り替わってしまっていたのです。 気づいた時にはもう5時間ほど放電した後でしたのでそのまま最後まで測定しています。 ▼グラフをクリックすると拡大表示
放電電流の違いによる測定容量の差(ごくわずかです)を考慮しても、一ヶ月の放電容量が1920〜1950mAh程度で、三ヶ月時点では1850mAh前後とほんの少し減っている程度で自己放電を抑えた電池の性能はじゅうぶんのようです。電圧維持特性が比較できないのは残念です。(かと言ってまた3ヶ月放置するのも…) ご指摘されたように、初期のeneloopのように少し肩が高く+極の「でっぱり」が低く見えるので、機器によっては電池ボックスの構造上使用できない可能性はあります。 耐久回数がJTTの言う1000回なのか、製造元のデータシートの500回なのか、もちろん日常使用ではそんな理想的な回数までは使用できないであろう事は前提に、日々実際に使用してみてどの程度で弱るのかを調べてみることにしましょう。 ● 半年後グラフ (追加しました) ▼グラフをクリックすると拡大表示
三ヶ月後ではかなり容量が残っていたようですが、半年後ではこのようにかなり減少しています。冒頭部分では不活性化した電圧の落ち込みも見られます。途中で暑い夏を越したので、この電池は熱に弱いのでしょうか?(いや、未確認ですが) 買ってすぐの初期容量(工場出荷から放置されていたもの)も少なかったですし、この電池は0〜3ヶ月程度までの容量保持特性は良いけれど、その後には比較的早く電気が抜けてしまうという感じなのかもしれません。 それでも従来のニッケル水素充電池と違い、半年後でも1500mAh程度(バラつきは大きくなっていますが)残っているのは放置期間中の性能保持という点ではやはり自己放電性能を改善された新タイプ電池の良い部分が大きいのには違いはありません。 本当に「乾電池の代わりに」と思って、半年や一年も機器に入れたまま使用しないとか、非常用に保管するなどをしないで、日常使用で一ヶ月に一回程度は使うのであれば使って充電すれば良いので、適度に使うには良い電池のようですね。
![]() ▼グラフをクリックすると拡大表示
「買ってすぐ使える」か?については約1000mAh使用できました。本来の容量の半分程度と「買ってすぐ使える」かどうかについては「使えないという事は無い」けれども満充電で出荷されているわけでは無いという事は記憶に留めておいたほうが良さそうです。 充電して使用できる実容量はMin.値の1900mAh以上Typ.値の2000mAh以下と表記容量通り充電できました。 10日後・一ヶ月後のグラフの差が非常に少なく、自己放電の少なさがみてとれます。 この電池の場合も充電直後とそれらの間に開きがあるのは、充電直後は充電時に印加された電圧の影響で短期間だけ少し電圧が高いことを表しています。 三ヶ月後には多少の電圧低下は見られますが、容量は一ヶ月後よりほんの少し減少しただけでほとんど減っていません。 自己放電を抑えた電池としてはかなり頑張っているのではないでしょうか。 三洋エネループの改善点の1つ「放電電圧が他の電池よりわずかに高い」という点と比較するとほんのわずか及びませんが、特に高い電圧を必要とする一部のデジカメ等で使用しない限りは『従来のニッケル水素充電池の自己放電面でのマイナス点を改善した電池』という利点はじゅうぶんにある電池のようです。 メーカー情報では自己放電特性は6ヶ月→90%、一年→85%。1000回繰り返しOK。 2008年末にネット通販ショップなど、一部限定で発売開始されました! ● 半年後グラフ (追加しました) ▼グラフをクリックすると拡大表示
e-keepは今回調べている3種類の電池の中で唯一「半年経っても自己放電が少ない」電池でした。半年後で約1630〜1700mAhの容量でしたので、満充電時を2000mAhと見ても約81.5〜85%の容量が残っていることになります。 メーカー情報の「半年で90%」には及びませんが、ほぼ公称値に近い性能です。 エネループでもメーカー公称通りの高性能は出ていませんし、メーカーの実験室で20度の定温で保管した場合と、温度が変わる一般家庭での保管ではやはり違いが出るのでしょう。 これくらいであれば、半年放置していてもすぐに使えるので安心ですね。
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