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「ちょっと奥さん!」
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■ 100円 スマートフォン用「充電光ケーブル」

ちょっと奥さん! 2018/10/12

 「ローソンストア100」で写真の「LEDパワーシグナル内蔵『 スマートフォン用 充電光ケーブル」を購入しました。(税込み108円)
 SAITO CORPORATION製で型番は「LE-FK002」です。

 スマートフォンに挿す側のmicroUSBプラグ内部に電子回路と2色のLEDが内蔵されていて、
● 充電中は赤色に光る!
● 充電が終了したら緑色に光る!
※ 充電していない時は常に緑色に光ります
という光の色で充電状況をお知らせしてくれます

 ケーブル長は実測で約24cm(コネクタ部含まず)で長すぎもせず・短すぎもせずという感じです。

 使われている電源・信号線は、昔の100円USBケーブルのように細くて粗悪なものではなく、パッケージ表記の「本製品は 5V 1A 対応商品です」は問題なく使用できそうです。

 後述するように、電流検出用にチップ抵抗が使われていますので、タブレット等の2A程度の電流が流れる機器では抵抗の発熱が多くなり、チップ抵抗の定格を超える可能性があるので説明書通り充電電流が1Aまでのスマートフォン等の充電にしないと、異常発熱や装置の破損の危険性がありますので注意してください。

 光るのはプラグについている三角形の部分と金属部の根元の白い樹脂が半透明になっている部分です。
 写真ではわかりにくいですが、なんと光る三角形はプラグの表面と裏面の両側についています!
 スマートフォンによってはmicroUSB端子が裏向きについている物もあるかもしれないし、コネクタが表向きでも裏向きに置いて充電するかもしれない!のでどちら向きでも光りが見える構造なのは便利です。

 しかもこの充電状態を表すLEDの光が結構明るいのも視認性がよくてポイント高いです。
 「夜、枕の横に置いたらまぶしすぎる!」という苦情も出そうな気もしますが・・・。

 実際に機器に刺して充電中にLEDが赤色に光っている状態が右の写真。
 昼間や、普通に電灯のついている明るい室内ではちょうど良い明るさですね。

 と、このへんまでは100円ショップガジェット紹介のブログ記事などでも掲載されているかもしれないような単なるレビューですが、ここは「気の迷い」です。
 気になる所は徹底的に調べてみないと気がすみませんよね(笑)

 この小さなプラグの中に「充電電流を測定して、その大小を判別して、赤または緑のLEDを点灯させる回路」がどういう状態で入っているのかは、店頭で商品をみつけた時から興味津々です(笑)

 というわけで、さっそく分解。
 外装のプラスチックを剥がすと、中には小さな基板とmicroUSBプラグを覆っている、あの光る部分にあたる半透明の白い樹脂パーツが出てきます。
 基板中央に載っている黒い表面実装型のICは見えますが、それ以外のパーツはよく見えないので半透明のプラスチックを引っ張って外そうとしたら・・・
 microUSBプラグの金具まで一緒にもげてしまいました!
 良い子のみんなは真似をしないようにしましょう(^^;

 分解するなら、金具を押さえながら、半透明のプラスチック部品だけずらして引き抜くようにすればmicroUSBプラグを破壊せずに綺麗に分解できます。二度目からはそうやっています(^^;

※ 一応この後無事にUSB端子の細いピンをプラグハウジングの中に戻せましたが、少しでも曲げたりしたら元に戻らない、または変に曲がった状態になってしまってそのままスマートフォンに挿してショートしたり最悪はスマートフォンを壊してしまう可能性があるので、本当にこのピンを抜いてしまったら素人が元に戻して使おうとしないほうが良いです。

 さて話を元に戻して、プラグ内部に納まってしまう小さなサイズの基板上には、6ピンのIC(マイコン?)が一個と、チップ抵抗が3本、チップコンデンサ一個、そしてチップLEDが4個(2個は裏側に)載っています。
 このサイズのプラグの中にこの回路が入ってしまうのは、近年のチップ部品の小型化の恩恵ですね。

 この6ピンのICは、電源端子の配置が中央の2本である等が6ピン型のPICやAVRマイコンと似ているような気もしますが、他のI/Oピンの機能などを考えるとちょっと違うので、一般的なPICやAVRマイコン以外にこういうピン配置のマイコンが中国では売られているのか、普通に考えてこの商品専用ICを製造しているのか、型番も見えませんし中身が覗けるわけでは無いので謎です。
 もしかしたら、何かの組み込み用に「消費電流判定用IC」という汎用部品として売られているICなのかもしれません。

 このケーブルのAプラグ側をUSB電源端子に挿すと、LEDが「」と点滅してこのICが起動したことを表示するので、アナログコンパレーター(またはオペアンプ)だけで電流の大小を比較してLEDを切り替えるような単純なものではなく、小型マイコンでプログラムを組んで電流値の監視をしてLEDの表示を切り替えるような仕組みを作っているような感じですね。

 USBのデータ線(D+/D-)は入力プラグと出力プラグの各端子に直結になっていますので、データ通信用ケーブルとしても使えますし、USB給電機器側がD+/D-に一定の電圧をかけていないと充電器を接続したとスマホ側が認識しないような組み合わせでも、正常に充電できる充電器とスマホの組み合わせでならこのケーブルをそのまま使えます。
 逆に・・・、USBのデータ線(D+/D-)が完全にオープン(無接続)でないと相手を充電器と認識しないスマホ等の機器?だと、パソコンなどのUSBポートに挿して充電しようとしたら「USB機器が認識されました」とか画面に出て、通信が始まって充電できない!とかいう不具合が出る場合もありそうです。
 そのあたりはお使いの機器(スマホや充電したいガジェット)の仕様によるのでよく確認してください。

 基板上にはこの基板の製造コードを表すと思われる「HYE-27」というプリントがあります。

 回路図を起こすとこんな感じです。
 「USB充電電流が流れているか識別する」機能は、GND側に"シャント抵抗"を入れてその両端電圧で電流値を知るというとても基本的な回路です。0.1Ω[R100]のチップ抵抗が使われています。
 その電圧をICの電圧入力端子に入れて内部で測定と判別をしています。

 判別結果は、よくある「マイコンのI/O端子を2つ使って極性を反転させて2色LEDを光らせる回路」のような2つの色のLEDの極性を反対向きに並列に繋いで構成になっています。
 ただしLEDに電流制限用抵抗が付いていませんので、これは単なるマイコンのI/O端子ではなく、「こういう風にLEDを直接繋いでいいように内部に電流制限抵抗または定電流回路を持っている」端子になっている可能性が大です。

 点灯時の実測で緑色LEDのVfは約2.4V赤色LEDのVfは約1.8Vでした。
 やっぱり抵抗(または定電流回路)はIC内部に入っているようですね。

 さて、ここで気になるのは「接続した機器にいったい何mA流れていたら『充電中』と判別しているのか?」ですよね。

 とりあえずUSB出力に手持ちの「可変電流負荷回路」を繋いで出力電流を手動で上げたり下げたりしてLEDの反応を調べた結果、この装置は【約140mA】以上の電流を感知するとLEDがからに切り替わるようです。
 そして同じく約140mAを下回るとLED表示がに戻ります。

 予想していたのよりは少し高い目の電流が閾値になっているようですね。

 これだと「小型のmp3プレーヤー」くらいの機器だと充電電流が低くて充電していてもLEDが赤に変わらないとか、スマホでも充電が進んで充電完了近くになって充電電流が少なくなって140mAを下回ると、まだ充電中でもこの装置のLEDはに戻ってしまう!という現象が起きそうです。
 ある程度閾値を高くしているのは、ノイズ等による誤表示対策と、スマホ等の中には充電完了後も外部電源からわずかに動作用の電流を消費している機種がある(かもしれない)ので、そのような場合には充電が完了してもこの装置のLEDがのままだと「充電が終わっているのに表示は充電中のままじゃないか!不良品だ!!」というクレームが入りそうなのでわざと高い目の電流値で切り替えているのかもしれません。

 たぶんそのせいでパッケージの動作説明図のところには充電約90%以上で緑色に変化という一文が添えられています。
 ユーザーによっては「なんで100%の充電完了を知らせてくれるようにしなかったの!? 不便じゃないの?」と思ってしまう人が居るかもしれません。
 メーカーの設計者にとっては痛し痒しといったところでしょう。

 あとそれと、このLEDがからに切り替わるタイミングと、逆にからに切り替わるタイミングには実際の電流値が閾値を超えたり下回ったりした瞬間よりおよそ1秒弱のタイムラグがあるというのも実験していてわかりました。
 電流値を判別している回路にゆっくり動作するヒステリシスを持たせているような動作ですが、色々と試して見た感じではやはり中にマイコンのような物が入っていて、プログラムで電流値の細かな変動・パルス充電の短いパルス変化などでLEDがチカチカしてしまわないように表示変更に一定の時定数を設定して確実な判定を行ってから表示を切り替えているような動作に見えます。(これも「LEDが変な点滅をする故障だ!」と言われないように?)
※ パッケージにも「充電がフルに近い状態ではケーブルのLEDが点滅する場合がありますが、携帯への影響はありません。」という感じの注意事項は書かれています。

◇   ◇   ◇

 さて、だいたい中身がわかってくると・・・「このLEDが切り替わる電圧(閾値)って変えられないの?」という「」のようなものが湧いてきますよね?

 というわけで、本装置の各部位の電圧などがどれくらいか?とか動作状況に応じてどう変化するのか?などを、色々と調べてみることにしました。

 実験方法や測定箇所がどうとかは・・・とてもめんどくさいのでここでは書くのは割愛しますが、結果的にはICの3番(6番?)ピンに付いている270Ωの抵抗で閾値を決めている」ということがわかりました。

 これも「よくある6ピンのマイコンICならここのピンってだいたいはリセット端子または単なるI/Oだから、わざわざ抵抗でGNDに落とすような回路は組まないよなぁ・・・」というよくあるICチップとの比較と、「なんでこんなLEDの電流制限用にも使えないような端子にわざわざ抵抗が付いているのか? 何かの定数をここで決めている?」という推測から行った測定と実験の結果明らかになったものです。

 上に載せた回路図中ではサラッと「閾値設定用分圧抵抗」なんて注釈をつけていますが、それを確認するまではかなりの手間がかかっています(^^;

 結果、導き出した本製品に使われている「電流検出用IC」の内部構成(ブロック図)は次のようなものと推測できました。
 この図に記入した通りの計算式閾値設定用分圧抵抗の値を変えてみて、実際に閾値が計算通りに変わってLEDの変化点が変更した設定電流を界に切り替わることも実験で確認しています。

 ということで、本製品のチップ抵抗(270Ω)を取り外して別の物に変えて閾値の違う充電ケーブルに改造するのもよし、このままの充電ケーブルで使わずにこの基板だけ外して別の何かの装置に組み込んで「電流監視(表示)基板」として活用するのもよしと、色々と流用ができそうです。
 交換する部品は閾値設定用分圧抵抗でなくても電流検出用シャント抵抗のほうでもいいわけで、夢は広がります(笑)

 抵抗値を変更すれば閾値を変更できると言っても、あまりVref電圧を低くすると(たった数十mVとか)電圧が小さすぎて少しのノイズで誤作動したり、正常な判定ができなくなる可能性もあるので、そのへんは色々と加減を見て安全な範囲を確認して変更してみてください。

◇   ◇   ◇

 たった100円の充電ケーブルに、実に面白いICチップが載っています。これは久々の買い!商品ですね。
(中華通販あたりで、この機能のICが10〜100個入りで一個単価20〜30円で買えるなら大量に使うならそっちのほうが良さそうですけど)

 「ちょっと奥さん」コーナーは100円ショップ商品などの紹介をするだけで、質問などの投稿受付フォームはご用意していないコーナーなのでご理解とご了承をお願いいたします。

 もちろん分解・改造は自己責任で!、分解や改造した製品をスマホ等に繋いでスマホが壊れた!とかスマホのデータが消えた!とかUSB電源が火を噴いた!とか、その他諸々のトラブルに対して「気の迷い」は一切の責任を負いません。

 本ページに掲載している回路図・ブロック図等についてもあくまで今回手元にある製品で調べた結果であり、今後製品の改良やマイナーチェンジで中身が違うものに変わってしまう可能性も特に100円ショップ商品というカテゴリーのものは高いので、皆様が購入された商品が今回掲載した通りの回路図・ブロック図を元に改造・使用できることを保証するものでもありません。
 今後別回路になった商品が発売されたとして、それに追随して本ページをその新製品にあわせて加筆・追加・更新する義務も負いません。(気が向いたらやる時もありますよ)



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