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- Powers PERFECT DISCHARGER -
パワーズ パーフェクトディスチャージャー
の性能を調べる


* 記事を掲載 2008/1/27


 今回内容を調べるのはパワーズの「パーフェクトディスチャージャー」です。

 今まで調べたラジコン用の安価で小型のバッテリー放電器はほとんどが「抵抗+ダイオード」または同等のオートカット回路無しの単純な放電器でした。
 「オートカット」と書いていてもそれはそのカット電圧のまま維持するだけで、回路をカットしてバッテリーを開放してくれいなものです。

 パワーズのこのパーフェクトディスチャージャーは「12bitsのCPUコントローラー内蔵で、セル数を自動認識して、オートカットオフしてくれる」ようです。
 他の単純な抵抗+ダイオード方式の放電器が3000円前後・またはそれ以上するのに対してこれはたった1680円(店頭価格)と、約半額!なのに、本当にカタログスペック通りの高性能放電器なのでしようか?


■ パーフェクトディスチャージャーとは?

 右の写真のように、タミヤコネクターが付いた放電器です。
 カタログ・パッケージには

● オートカット1A放電器
● Ni-Cd、Ni-MH 自動認識
● タミヤコネクター仕様
● 12bitsのCPUコントローラー
● 4〜8セルバッテリーに対応
● サーモコントローラー内蔵

バッテリーのコンディションを最適に保つオートディスチャージャー!
4〜8セル(4.8V〜9.6V)のニッカド、ニッケル水素バッテリーを自動認識し、最大1Aにて放電を開始します。サーモコントローラー機能により本体温度が上昇すると0.3Aまで放電電流値をさげ、放電が完了時には自動的に放電をカットし、ブザーとLEDにてお知らせいたします。
 などと書かれています。
 またパッケージのまた注意書きに
注意:放電のカットオフが完了した後でも、放電器は0.1A程度の微量な放電を行っています。長い時間放電をされますとバッテリーがダメージを受ける可能性がございますので、放電完了後は、放電器からバッテリーを抜いてください。
と、放電完了後も0.1A程度も電流が流れているとの注意書きがあります。
 ラジコン用の放電器で「繋いだままだとバッテリーにダメージが…」と明記されているのは珍しいと思います。(良心的?)

 メーカー希望小売価格で2000円と元々の値段も安く、店頭価格では1680円(某量販店)とラジコン用品の放電器としてはとんでもなく安いので本当にこれだけの効能書きに書かれた内容なのか心配になります。


■ 開けてみた

 黒い底板とアルミケースを止めているネジ4本を外すと底板は外れますが、基板はまだ外れません。

 外からもネジが一本あって、それで止められていることがわかるパワートランジスタも外さなければなりません。

 またパワートランジスタの近くに温度検出用のサーミスタが接着されていますので、これも外さないといけません。
 サーミスタは「固まるシリコン」で接着されていますので、元に戻す時には新しい「固まるシリコン」で接着してやる必要があります。(でないと温度検出できなくなる)
 もし「固まるシリコン」などの放熱用接着剤を持っていない人は元に戻せなくなるので分解はしないほうが良いでしょう。
 基板を取り出すとこのような感じです。

 ほぼ中央に見える2Ω(5W)のセメント抵抗が放電用の負荷抵抗のようです。

 14ピンICが見えますが、これが性能表に書かれている「12bitsのCPUコントローラー」ですね。
 ほか、電源回路やブザーなども見えます。
 ザッと基板上の部品などを見る限り、PICマイコン等で作る放電器の基礎部分では違いは無いようです。

 マイコンチップは台湾の半導体メーカーSONIXSN8P2711で、4チャンネルのアナログ(A/D)入力、2チャンネルのPWM/ブザー出力を持つ「アナログ制御用」に特化したRISCマイコンチップです。
 ところで、パッケージや商品説明には
● 12bitsのCPUコントローラー
と書かれていますが、SN8P2711はデータシートによると「8ビット・マイクロコントローラー」となっています。
 プログラムメモリーのデータ幅はRISCチップなので16ビットですがデータ幅は8ビットと8ビットアーキテクチャなのでどこにも「12ビット」のプロセッサである理由がありません。(PIC等と同様の呼び方をするなら16bitsなんですが…)
 内部ブロック図の一部に「12-BIT」という誰が見ても「12ビット」とわかる記述はありますが、これは「A/Dコンバータの分解能」について書かれているものなので、決して「12bitsのCPUコントローラー」では無いのですが、この部分を見て「これは12ビットのCPUだ!」なんて勘違いしているのでしょうか???

 いやまぁ、プログラムが動作して能書き通りの放電が出来れば別に問題ではありませんが、わざわざ「12ビットの!」みたいに高性能っぽく書いている所が実は違っていたというのはどうなんでしようね。

 話が横道に逸れましたので、元に戻しましょう。

 回路はこちらのブロック図のように、バッテリーの電力で回路を働かせる為の電源回路、SN8P2711が制御する放電回路、そしてSN8P2711に接続されているブザーやLED、ケース温度を感知するサーミスタ等で構成されています。

 特にスイッチ等は無く、バッテリーが接続されて電源が入るとSN8P2711のプログラムが起動し、
 (1) 予備放電・バッテリーセル数検知
 (2) 放電本番
 (3) 放電終了の検知・終了
の各ステップを進行します。

 SN8P2711は放電回路のPWM制御(放電電流制御)やブザーを鳴らす低周波発振信号は容易に回路が作れるようになっています。
 またバッテリー電圧の検出やサーミスタによる温度検知も内蔵のA/Dコンバータで容易に測定することができます。

 サーミスタによる温度検出回路・ブザーのドライバ、LED点灯回路は基礎的な回路ですので今回は解説は割愛します。


■ 放電回路の妙

 パーフェクトディスチャージャーは4〜8セルのバッテリーパックに対応しています。
 それぞれのセル数によって電圧が違いますが、放電負荷抵抗は2Ωのセメント抵抗ですから何らかの制御で放電電流を1Aにコントロールしている事は予想できます。

 A/D入力端子PWM制御端子を持つマイクロコントローラーを使用するなら、普通は「電流を検出して一定に保つ為にPWMのデューティ比をコントロールするプログラムで制御する」のがセオリーですし、今回の回路にはそれが出来るSN8P2711が搭載されています。

 実際にPWM端子の信号波形をオシロスコープで観測すると、電源を入れて最初は0%、それから約1秒程度で100%までギューン!とPWMのデューティ比は少しの時間をかけて上がります。
 多分、バッテリーに異常が無いか、突然100%で負荷に接続して何かトラブルが起きないかをチェックしながら電流を徐々に増やしながら100%まで変化させている事は想像がつきます。(実際のプログラムは読めませんが…)

 ここまでの観察では「ああ、放電部をPWMで制御しているな」という事は分かりましたが、測定を進めるとちょっと不可思議な状態だと分かりました。
 4セルのバッテリーを繋いでも、6セル、8セルの各バッテリーを繋いでも必ずPWMのデューティ比は100%まで上がるのです。スイッチング用のパワートランジスタは100%でONになっている(単にスイッチが入っている状態)はずなので負荷抵抗が2Ω固定だからバッテリーの電圧が違えば流れる電流値は違ってくるはずです。
 しかしバッテリー電圧が違うはずなのに放電電流はどのバッテリーでもちゃんと1Aなのです!
 バッテリーの電圧が違うのに、放電電流はどの状態でも1Aに制御されています
 ・・・という事は、「セル数にあわせた電流値は、PWMで電流は制御していない」という事になりますね。
 電源を入れた時には確かにPWMで電流値を制御しているようにPWM波形は変化しています。またそれにあわせてバッテリーから流される電流値も0A〜1Aまで変化しています

 PWMデューティが100%でも電流はバッテリーのセル数に合わせてどこかで調整されているようです

 その謎は放電回路の回路図に秘められています。

 放電部は右の回路図のようにダーリントン接続された2つのトランジスタと、負荷抵抗(2Ω)が使用されています。

 バッテリーの電圧は1/4に分圧されて[A/D入力1]で測定されます。
 電流は負荷抵抗(2Ω)の両端に現れる電圧を[A/D入力2]で測定されます。

 放電電流を「流す/流さない」はPWM出力でトランジスタを制御していますが、通常放電中はデューティ比100%で単純にトランジスタをONにしているだけです。

 そこで、回路図をよく見ると・・・回路方式が「エミッタフォロワ」になっている事に気が付きます。
 エミッタフォロワ回路はトランジスタの入力と出力の電圧を保ち電流は大きくするバッファ用途に多く使われますが、今回の使用方法では負荷抵抗とあわせて「定電流回路」が成立しています。

 PWM出力がLow信号の場合、もちろんこの回路のトランジスタは働きません。

 PWM出力がHi信号の場合、出力ポートには電源電圧である約3.3V弱の電圧が出力されます。ベース抵抗を通った後のQ2のベースでは実測で3.2Vになります。
 エミッタフォロワ回路ではエミッタ電圧はベース電圧Vb−ベースエミッタ間電圧Vb-eとなりますので、今回はダーリントン接続でトランジスタ2つぶんのベースエミッタ間電圧Vb-e×2の電圧を引いた電圧がQ4のエミッタ電圧となります。
 一般的なシリコントランジスタのVb-e0.6Vですから、×2で1.2Vを引くとQ4のエミッタ電圧は2.0Vと求められますので、PWM出力がHiレベルの期間には2Ω抵抗の両端には常に2Vの電圧が現れ、オームの法則より電流は1A流れることになります。

 この電流はコレクタ電圧(バッテリー電圧)が2V+α(Vc-e)以上ある場合は一定に保たれ、コレクタ電圧−2Vぶんを常にトランジスタ(この場合パワートランジスタQ4)が消費する形となります。

 トランジスタの損失(=発熱)は「(バッテリー電圧−2V)×1A」ワットとなり、セル数が多いほど発熱も大きくなります。アルミケースで放熱するしくみになっていますが6セルバッテリーを放電するとかなり高温になります。
 2Ωの負荷抵抗では常に2V×1Aで2ワットの発熱がありますが、これは5W品を使用しているので問題は無いでしょう。(ケースの中が暖かくなる程度です)

 このように、エミッタフォロワで定電流回路を構成しているので、PWM制御のほうは1A放電をしたい時にはデューティ比を100%にすれば良いだけという事になり、プログラムで電流値を計測しながらパルス出力を調節する必要が無くなりプログラマーの負担は大幅に軽減されます。
 PWM出力を「100%にすると1A」「50%にすると500mA」と、%に比例して電流値を制御できる為に何らかの電流制限や制御が必要な場合も単にデューティ比を変えるだけですみますね。

 実際、パーフェクトディスチャージャーはサーミスタで高温を検知するとデューティ比を33%に変化させて放電電流を333mA(前後)に低減させています。

 パーフェクトディスチャージャーの放電回路は「1Aの定電流放電回路+PWM制御で電流可変」である事は分かりました。


■ ソフト面の性能

 放電電流はカタログスペック通り1A(または高温時333mA)ですが、次の点についてはどうでしょうか?
● Ni-Cd、Ni-MH 自動認識
● 4〜8セルバッテリーに対応
● サーモコントローラー内蔵
 この機能を実現させるのはマイコンチップ内に組み込まれているプログラム、「放電コントロールソフト」のお仕事です。

 プログラムを直接読み出して調べる事はできませんので、放電器の挙動からそのしくみ・判断基準を探ることにします。

● Ni-Cd、Ni-MH 自動認識?

 まずは
● Ni-Cd、Ni-MH 自動認識
 この記載によると「ニカド電池とニッケル水素電池を自動的に認識して、放電機能(電流?・カット電圧?・その他?)」を何か切り替えているのかと思いますが、挙動からはニカド/ニッケル水素充電池で放電機能に変化は認められませんでした。
 何ヶ月も、また何十種類ものバッテリーパックでテストをすると何か違いが分かるのかもしれませんが、今回のテスト期間では特に違いは見つけられませんでした。

 もしかしたら「Ni-Cd、Ni-MH対応の放電器で、電池のセル数を自動認識して放電しますよ」という機能について間違ってこう記述しているのではないか?という疑問も湧いてきます。(つまりあの2行は実は意味がごっちゃになっている)

 こちらの調査不足の可能性がじゅうぶんありますので、ニカド/ニッケル水素バッテリーパックで放電時の挙動が違う事を確認された方がいらっしゃいましたら(電圧や電流のデータを添えて)お教えください。

● 4〜8セルバッテリーに対応

 さて次に
● 4〜8セルバッテリーに対応
については「セル数を自動認識して、カット電圧を変更している」という想像が容易にできますね。(「自動認識」という単語は本当にこっち用じゃないの?)
 ラジコン用充電器などでもセル数の自動認識という技術はごくあたりまえのように使われています。

 ここで誰でも心配になるのは「本当に自動認識してるの?」「過放電させていない?」という事ですよね。
 液晶パネルが付いていて、認識したセル数や放電中の電圧でも表示してくれれば疑問も心配も無くなるのですが、さすがにLEDが一個とブザーだけでセル数に関しては何もお知らせしてくれません。
 「放電開始時のブザー回数でセル数を知らせる機能」くらいは付いていたら良かったのですが・・・

 そこで放電電圧(セル数に相当)を変えてパーフェクトディスチャージャー一体何Vでカットするのかを調べてみました。

 実際にはパーフェクトディスチャージャーが「放電開始前(電源を入れた瞬間)のバッテリー電圧を測定しているのか?」「15秒の予備放電の最後の電圧を測定しているのか?」「両方から計算しているのか?」など判定アルゴリズムも内部プログラムが読めない限り想像でテストするしか無いわけです。

 そこで可変電圧電源装置と直列に抵抗を繋ぎ「開放時は少し電圧が高い」「1Aで放電すると電圧がドロップする」というバッテリーに似た電圧を示す擬似バッテリー装置を作り、それをパーフェクトディスチャージャーに繋いでテストを行いました。

 開始から15秒後の予備放電(セル数チェック)終了時の電圧と、判定されたセル数・終止(カット)電圧はこちらの表のようになりました。
セル数 カット電圧 判定範囲
4セル 4.0 V (1.00V)     〜 5.9 V
5セル 4.8 V (0.96V) 6.0 V 〜 7.2 V
6セル 5.6 V (0.93V) 7.3 V 〜 8.2 V
7セル 6.4 V (0.91V) 8.3 V 〜    
8セル 6.4 V (0.80V) 7セルと同じ

 あれ?、8セル用の設定がありませんよ???
 カット電圧は0.8Vステップで1セルずつ上がっていますから、8セルでは7.2Vでカットするように働くように思えますが、実際に入力電圧を13〜14V程度(この回路の限界)まで上げてもなぜか「8セル設定」というものが見つけられませんでした。
 7セル以上はすべて6.4Vカットで動作するようです。

※ 電圧検知A/Dコンバータの入力回路はバッテリー電圧を1/4に分圧していますので、その端子入力電圧が電源電圧である3.3Vを超えるとマイコンチップが破壊される可能性があります。3.3Vの4倍で13.2V(約9セル)が限界値となりそれ以上の電圧を与えてはいけません。

 8セルバッテリーを放電させると1セルあたり0.8Vで終止する事になりますが、セルの直列本数が増えると内部抵抗の影響が大きくなりますので多少カット電圧を小さくしたほうが実際の放電動作には良いのかもしれません。
 ニカド・ニッケル水素充電池の放電カーブから実際に1セル電圧が1.0Vを下回って0.8Vになるまではごく短時間ですから、バッテリーが正常であれば特に問題はありません。

 しかし、なぜ8セル設定が無いのか(見つけられなかっただけ?)のかは謎です。

● サーモコントローラー内蔵

 最後は
● サーモコントローラー内蔵
についてです。

 これは『サーモコントローラー機能により本体温度が上昇すると0.3Aまで放電電流値をさげ』と説明されている機能です。

 実際に「放電中は本体が触れない位に熱くなる」「1A放電にしては時間が長く掛かった」というユーザーの声があります。
 私も「本体が熱くなる」に関しては最初にお借りしてその場でバッテリーを繋いで放電させた時から驚くほど熱いのには参りました。

 温度センサーは「開けてみた」で書いたように中にサーミスタが入っていてアルミケースの温度を測定しています。
 そして放電回路の説明の項で既に書いてしまっていますが、高温を検知すると放電電流をPWM制御で制限して約333mA(1/3)に絞り発熱を抑えます。

 サーミスタに電子温度計のセンサーをくっつけて温度を測ってみましたが、約70℃になると高温と判断して電流を下げ、約60℃程度まで下がるとまた1A放電に戻りました。
 電子温度計の表示温度とサーミスタで実際にパーフェクトディスチャージャーが検知・判断している温度に多少の差はあると思いますので、おおまかな測定値としてお考えください。

 確かに、約60℃にもなると人間が素手で触るには熱すぎます。
 7.2Vバッテリー等を夏場や暖かい室内で放電するとじきにこの温度になって放電電流が絞られるかもしれません。
 パーフェクトディスチャージャーは放電時にはファンで冷ましてやるのが良いかもしれません。
 または、外部から見えるパワートランジスタの固定ネジの所に別途放熱板などをとりつけて放熱効果を上げてやるか。(外部からネジを外すだけでは中でナットが外れて転がってショートしますので、必ず分解して中のナットを止め直す必要があります)

 もちろん、走行後のヘバったバッテリーを放電する場合は放電も短時間ですから過熱を検知する前に放電が終わるか、または電流が絞られても時間的にはあまり気にならないかもしれません。

● LEDとブザーでお知らせ

 LEDは赤色LEDが一個だけついています。

(1)
 電池を繋ぐと15秒間予備放電でセルチェックを行います。この間LEDは点滅します。
(2)
 セル数を確定すると「ピー」とブザーが鳴って放電を開始します。
 LEDは点灯しっぱなしになります。
(3)
 電圧がカット電圧になるとLEDが高速で点滅をはじめます。
 そのままカット電圧を数秒維持、または更に電圧が下がった場合は「ピピピッ!…ピピピッ!…」というブザー音で放電終了を知らせてくれます。
 LEDはゆっくりとした点滅に切り替わります。

 コネクタの接触不良等で一瞬だけ電圧が下がっても誤判断しないように出来ているようです。

 ブザー音は結構大きな音で、普通の家の中では隣の部屋や他の場所に居ても良く聞こえます。
 屋外コースや人の多いピットに居ても良く聞こえるでしよう。(ピットではみんながピーピー鳴らしているのでどれが鳴っているのかわかりにくいですが・・・)

 終了お知らせブザーが付いているのは本当に便利ですね。

● 終了後も電流が?

 パッケージには
注意:放電のカットオフが完了した後でも、放電器は0.1A程度の微量な放電を行っています。長い時間放電をされますとバッテリーがダメージを受ける可能性がございますので、放電完了後は、放電器からバッテリーを抜いてください。
と、約100mAも電流が流れているような記述があります。

 確かに放電終了後もLEDが点滅していてLEDの消費電流やマイコンチップも動作しているので回路には電流が流れているようです。

 実際に測ってみるとLED点滅にあわせて変化する13〜17mA程度(電源電圧により多少異なります)の微弱な電流で、そのまま一晩や1〜2日間バッテリーを繋ぎっぱなしでも全然問題はありません。
 メーカーとしては危険回避・責任回避の為に記述しているようですが、放電終了後に電流が流れているのは本当ですが短時間にバッテリーにダメージを与えるような電流量ではありません。

 ダイオード+抵抗の放電器のように「ランプが消えたらすぐ!バッテリーを外さなければいけない」ような過放電器ではありません。目を離していても大丈夫ですから安心して放電させられます。


■ まとめ

● 1Aの放電
● セル数自動判定でのオートカットオフ
● 過熱検知と電流制限機構 (過熱時は333mA)
● LEDとブザーによる状態告知機能

 などコンパクト放電器としては十分な性能を実現している事がわかりましたのでまさに「パーフェクト」に近い放電器です。

 惜しむらくはこのサイズで7.2Vなどの電圧で1A放電をさせると約7ワットもの発熱ですから、その大半をパワートランジスタをネジ止めしているアルミケースからの自然空冷に頼っている点で、ちょっと触れないくらいの高温になるのでヤケドや知らずに触ってびっくりする心配がある点がマイナスですね。

 タミヤ製「AUTO-DISCHARGER/2」7.2Vバッテリー放電器は約300mA放電と少々電流値が少ないですので、やはり1A程度の放電電流は欲しいところ。
 マッチモアのセルコンディショナーは1Aで放電してくれますが中身は抵抗+ダイオードですから自動的にバッテリー放電は終了してくれません。発熱量は同じようなものでしようが、こちらはアルミケースに接していない(ケースの中にある)負荷抵抗が発熱するのでケースの熱さはまだマシですね。

 かなり熱いですが、電気的な面ではラジコン用の高価な充電・放電器と同等に近い機能を有していますので、メーカー希望小売価格2000円でここまで入っているパーフェクトディスチャージャーはコストパフォーマンスの点においては他社製品を大きく引き離して、直列バッテリーパック用のコンパクト放電器としてはまさに「パーフェクト!」な製品だと思います。

 直列放電なので、パック中の先に弱った電池を更に痛めつけることになるとか、放電に関しては色々と問題はありますが、「バッテリーパックの分解・改造・修理・バラセルの使用禁止」などレギュレーションでパック状態のまま使用しなければならないレースで使用するのであればそれは仕方ない事。放電器の責任ではありませんしね。

 それにそういう点で突き詰めるレーサーの方はこんな安物(!?)の放電器では無くて、もっと高くて高級な充電・放電器でバッテリーの管理をされるでしょう。
 趣味の範囲でラジコンをされている方、電動ガンのバッテリーを放電させたい方などには安くて強い味方になると思います。

 ・・・・本当に熱いですよ!
 ケースに「DANGER HOT!」と印刷されているのはダテじゃありません!(笑)


◇ 関連記事 ◇

タミヤ製「AUTO-DISCHARGER/2」
を開けてみた

おまけ
◆ BATTERY ALARM の製作





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 こんにちは。以前にタミヤ製ディスチャージャーで質問させていただきました者です。
 このレポートを読んでパーフェクトディスチャージャーを購入しました。タミヤ放電器よりも便利で重宝しております。
 最近気付いたのですが、パーフェクトディスチャージャーで放電完了したバッテリーをタミヤディスチャージャに繋いだら、まだまだタミヤのLEDランプは明るく光ってます。
 これはタミヤとパワーズとの設定の違いなのでしょうか?
 当方、タムギア等に使うインテレクトのミニサイズバッテリー
 7.2Vで使ってます。パワーズ製の放電で十分で気にする程では無いのでしょうか?
いとう 様
お返事  設定の違いではなく、放電方法の違いによるものと、電池の正しい特性です。

 まさかとは思いますが、「放電が終了した電池は電圧が無くなってる」と勘違いされていませんか?
 これも何度も説明していると思いますが、壊れていない電池は放電終了後に電圧は回復します。回復しなければ劣化して性能が著しく悪くなった電池です。

 ニッケル水素充電池は大きな電流で放電した場合は放電終了時にはセル電圧が急激に下がるグラフなどは何度も掲載しているのでご覧になられていると思います。
 そこで放電終止電圧になった時に放電を止めるのが正しいニッケル水素充電池の放電管理方法です。
 パワーズパーフェクトディスチャージャーでは定電流回路で放電開始から終了まで一定の大電流で放電しますからこの放電方法と終了方法に準拠します。

 正しく放電カットして電池を放電回路から開放すれば、その瞬間から電池の電圧は素早く回復に向かいます。LEDをつなげはもちろん点灯します。

 それに対してダイオード+抵抗の放電器など電流が一定で無い・電池を開放しない放電器はバッテリー電圧が下がると放電電流も下がり、更にオートカット(電池を開放する)ではありませんので放電終止電圧に達しても「設定電圧を維持する為に延々と放電を続ける」為に電池からは常にエネルギーを吸い出します。

 ニッケル水素充電池に使われている化学物質の性質上、放電終止電圧を下回る(過放電)、または終止電圧に非常に近い状態を長時間維持すると電池を劣化させてしまいますので、正しい放電方法とは放電終止電圧まで放電したら電池を開放し、電池は自分の回復力で天使電圧を上げて低電圧での劣化から内部を守る必要があります。
 放電終了を判定して電池を開放すれば電池の中の物質が正常であれば端子電圧が回復すると共に「自己防衛」が働きますが、もし電池の内部エネルギーを規定より吸い出していて力尽きていれば回復する力は弱く、電池は自然と死に至ります。

 ですから、「正しく電池を開放している放電器」であれば放電後の電池は端子電圧が上がっていて、LEDを繋いだりしたらちゃんと点灯します。
 その状態でもう一度パワーズパーフェクトディスチャージャーで放電すると数分程度で放電が終了するでしよう。これは既に正しく放電していて残りは自己防衛ぶん程度の電力のみ残している証拠です。

 正しく放電が完了している電池をダイオード+抵抗のような放電器にかけると、電池の能力が低くなっている=放電電流が少ない状態でダラダラと放電を続けますので、しばらくはLEDが点灯し続けると思います。そして電池に残っている余力を吸い出して電池にダメージを与えます。
お返事 2008/3/30
投稿
3/31
 理解できました。詳しい説明ありがとうございました。
いとう 様
 
 DANGER HOT!
 この冬を乗り切る暖房器具にもなりますね!
(匿名希望) 様
お返事  熱くなると自動的に電流を減らす働きは、ケースの温度を一定に保つサーモスタットと同じ働きですから、暖房器具としての必要要件は満たしていますね(^^;
お返事 2008/2/7
 
 今までのパーフェクトな『デス・(ディス)チャージャー』に比べるとかなり優秀なようですね。
 …いや、『優秀』と言うよりは『まとも』というか....『これくらいは備えとけよ!』な位かもしれませんね。

 温度面ではやや微妙かもしれませんが、一晩ほどほったらかしても無問題っぽいのはありがたいですね。

 ま、使うような環境にないので半ばどうでもよかったりする自分ですが。(苦笑)
瑠璃 様
お返事  セル数オート等の為にマイコンチップを使って作っているのでしようが、たとえば7.2Vバッテリー用の固定放電器でも自動的に放電をカットしてバッテリーを解放する位は容易にできるはずなのですけどね・・・

 去年末から国内のラジコンレースレギュレーションも順次改定になって、バッテリーが6セルから5セルに変更になったりもしていますので、こういうセル数自動判別の放電器は今年からかなり需要が増えそうです。
 ・・・とは言え5セルを使う人はバラセル用放電器を使いますか・・・
お返事 2008/1/28
 

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