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気の迷い ★★ 小ネタ集 ★★ ![]() 赤色自転車点滅ライトの白色LED化 ◆ 100円ランプにチャージポンプ昇圧回路追加 ◆
自転車ライトの点滅化改造ページに「100円ショップ自転車用点滅ライト(赤色の尾灯)を改造して白色LED化していますよ」という投書を木下様(仮名)という方から頂きました。
面白そうなのでメールで何度か連絡し、木下様の元の回路を二人で更に改良することで今回発表する改造ランプができあがりました。 ここしばらくはチョッパ型の昇圧型DC-DCコンバータ形式の回路を使った記事が続きましたが、もう1つの昇圧回路の基本であるチャージポンプ回路を使った電子工作をご紹介する良い機会だと思い記事化しました。 * 詳しい改造手順を追加掲載 2007/1/8
![]() 自転車−151という商品番号です。 透明ケースの中に赤色LEDが5個ついていて単4電池2本(別売)で光らせています。 裏のスイッチを押すと常時点灯と6パターンの点滅の合計7パターンが順次選択できます。 ケースが透明なので『白色LEDのライト!?』と勘違いしそうなちょっと怪しい面もあります。 電源が3Vですのでそのまま赤色LEDを白色LEDに交換しても、一応点灯はしますが白色LEDをじゅうぶん明るく点灯させるだけの電圧ではありませんので、暗いですし電池が少し減るだけですぐに電圧不足でつかなくなってしまいます。 何らかの改造を加えないとこのライトを明るく光る白色LED化するのは無理です。
このライトの中の基板はこんな感じです。
![]() ※ LEDは取り外して、部品位置や方向を写真に加筆しています。
LEDが5個と、基板の中央にモールドされた点滅ICがついているのがわかります。 点滅パターン選択スイッチは接点を形作るパターン(櫛形の部分)に導電ゴムを押し付けるタイプです。電源を切るスイッチはありません。(8回押すと消灯に戻る) ![]() 回路図はこうなります。 5つのLEDは全部独立しているのではなく3つのグループになっています。 LEDをつける端子(出力ポート)は測定した結果オープンコレクタタイプのようです。電圧出力は無くGNDへの引き込み専用です。 赤色LEDの状態で、点灯時各LEDには約40mAの電流が流れています。 制限抵抗は特に無くIC内部の出力トランジスタの飽和電圧ぶんにあたるほんのわずかの電圧減だけで、ほぼ直接電池の電圧がLEDにかかっています。 電源OFFスイッチはありませんが、LEDが全部消灯している時はICにマイクロアンペアメーターでも計り難いような微弱な電流しか流れていませんので、ほぼ電池の消耗はありません。 点滅している時はLEDに定格以上(約2〜4倍の40mAも)の電流を流してもこの機器の場合はLEDは壊れませんが、常時点灯状態で40mAも流してしまうと極端にLEDの寿命を縮めてしまいます。 「どうせ中国製だし、そんな所はちゃんと考えていないんじゃないの?」とも思いましたが常時点灯しているLEDを見るとどうも点滅状態より暗いのです。 そこでオシロスコープを繋いで調べてみると、常時点灯時は約150Hzでデューティ比25%くらいでパルス点灯させていました。 ※ 製造ロットの違いなど製品により周波数等は多少違うようです
常時点灯時でもLEDが痛まないように、ちゃんとパルス制御で電流制限をかけていたのです。単4電池にしては大きな電流なので、電池を長持ちさせるという意味合いもあると思います。ちょっと中華回路を見直しました。 で、ここで特に流用する程の物でも無いし・・・と私は長い間放置していたのですが、今回木下様より「このパルスを利用してチャージポンプを働かせて白色LED化しています」というご連絡を受けて、「なるほど、その手があったか!」とこのライトの利用価値がグン!と上がったというわけです。 【注意】 今回は点灯時(常時点灯時も)LEDドライブ出力が発振している回路なのでこの改造ができるものです。 発振しないタイプのライトでは同じ改造をしてもチャージポンプは働きませんのでご注意ください。
では、この回路にチャージポンプ回路を追加して、白色LEDを点灯するのに必要な電圧を作る昇圧回路を組み込みます。
改造後の回路図はこのようになります。 ![]() ・LEDのコモン(+側)を電源+から切り離してチャージポンプ回路に繋ぐ。 ・チャージポンプ回路を追加。(各LEDの−側を発信源にする) の3つのポイントになります。 各LEDの−側、すなわちICの出力端子は常時点灯時には約150Hzで発振しています。 また点滅パターンの場合にはその点滅周期で発振している発信源とみなせます。 その発振信号を昇圧回路の発信源にしてチャージポンプを働かせようというものです。 * 追加 * 「常時点灯」時の発振出力は、ダイナミック点灯ではなく全グループが同時にON/OFFしています。 最初はダイナミック点灯ではないのか?(電気屋的に考えればそれが最適)という所から設計が始まっていますが、実際に測定して全部同時に動いていることを確認していますので今回の回路図のようになっています。 「常時点灯」では全出力同時に、「点滅」では各出力別にGNDに引き込まれますので、どちらの点灯パターンの時でも昇圧できるようにしています。 ● チャージポンプ昇圧回路のはたらき ここでチャージポンプ昇圧回路がどのようにして昇圧するのかを説明します。 チャージポンプとは、「ポンプ」の名の通りコンデンサに電気を溜めたり流し出したりしてまるで水を送るポンプのように電気を吸ったり吐いたりする回路のことです。 電気を吐き出す時に、電源の電池とコンデンサを直列にすると電圧は最大約2倍にすることができます。 ● コンデンサに電気を溜める ![]() LEDが点灯しないとき、ICの出力ポートはOFFで電流のGNDへの引き込み動作はしませんのでトランジスタはONにはならずトランジスタに電流は流れません。 トランジスタがOFFの状態ではコンデンサには電源からダイオードを通って+から−に電流が流れ、充電されます。 充電完了までの時間は保護抵抗の値により変わります。 ● コンデンサから電気を吐き出す ![]() その信号を抵抗でトランジスタのベースに接続することで、LED点灯時に同時にトランジスタをONにします。 トランジスタはコンデンサの−側を電源の+側に接続するよう接続されていますので、ONになると「電池」→「コンデンサ」と直列接続したようになり、コンデンサの+側からLEDに電池とコンデンサに溜められた電圧を足した電圧が供給されます。 これでLEDには電池電圧より高い昇圧した電圧がかかり、電池2本の3Vからでも白色LEDを点灯させる電圧を供給できます。 コンデンサとGNDの間に接続されている制限抵抗には、コンデンサ充電時には充電電流が流れますので抵抗値が小さいほうが良いのですが、放電時にはトランジスタを通じて電源に接続されてしまうために何にも使われない無駄な電流が流れますのでなるべく大きい抵抗値にする必要があります。 大きすぎると十分に充電できずにLEDは暗くなり、小さすぎると電池を無駄に消費したりトランジスタを壊してしまったりします。 このライトの発振周波数には個体差でかなりのバラつきがあるようですので、100Ωから1KΩの間くらいで適宜カットアンドトライして決めてください。 図ではいちばん上のLED(外側2個)が点灯している様子で線を描いています。 「点滅パターン」でどれか1組が点灯している瞬間は図のようになります。 「常時点灯」では、3組全てが同じようにONになって同時に点灯します。
今回使用した部品はこんな感じです。
![]() トランジスタは手持ちの2SAタイプの2SA1048を使用しましたが、小信号用のPNPタイプであればなんでもかまいません。お店で「2SA1015互換品でパッケージが小さい物」と言って購入すればよいでしょう。 写真では標準的なTO-92パッケージのトランジスタ(2SC1815)を比較用に並べています。 そして今回の改造で最も苦労したのは100μFの電解コンデンサで直径が3〜4ミリ以内の物を探すということです。 一般的なアルミ電解コンデンサでは7〜8ミリ程度以上の太さがあり隙間に全く収まりません。積層フィルムコンデンサ等で適当な小ささの物が無いかと探していたら、手持ちのパソコン関係のジャンク基板の電源回路に150μFのチップコンデンサがいくつか載っているのを見つけましたのでこれ幸いと基板から剥がして使用することにしました。秋葉原のチップコンデンサを売っている店などでも新品を入手可能だと思います。 容量200μF以上にしてしまうと、十分に充電できずにLEDが非常に暗くなります。逆に50μF程度では容量不足で明るく光りません。100μ〜150μFの部品を使用してください。 どうしても超小型の100μFの電解コンデンサが入手できない場合は、ケースを一部削るか、上側に付いている銀色の反射板を一部カットしてコンデンサが入る隙間を作ればなんとか入ります。 (共立電子で4V100μFの電解コンデンサが販売されていて、かなり小さいのでケースを削らなくても使えるのではないかと思います) 改造後の基板はこんな感じです。 ![]() 抵抗も1/8W品を使えばもっと小さくなりますが、その部分はこれ以上厚みを少なくする必要も無いので1/4Wの物を使用しています。写真では他部品が小さいので抵抗が大きく見えますね。 制限抵抗の値はカットアンドトライで120Ωにしました。 ダイオードは少しでもコンデンサに多く充電電圧をかけられるようVfの低いショットキータイプを使用すべきですが、実際の回路ではVfが0.6Vのごく普通の小信号用ダイオードまたは整流用ダイオードでも充電電圧には微々たる差しか現われませんでした。 特に高価なショットキーダイオードで無くても5〜10円くらいの小信号用ダイオードでじゅうぶんです。 ● 詳しい改造手順 2007/1/8 追加
本記事を公開後、「完成写真を見ても改造方法がわかりません」という投書を何通か頂きました。(頑張って勉強して自分で工作できるようになってください…)参考までに改造手順を掲載します。 ![]() 基板上の3箇所(白い丸の中)をパターンカットします。 これでLEDのコモンを電源から切り離します。同時にICの電源端子も電池の+から切り離されますので、後にリード線で接続します。 ![]() 後で部品やリード線をハンダ付けするポイントになります。 ![]() つぎにパターン面にダイオード・電解コンデンサ・抵抗を載せます。ダイオード・電解コンデンサにも極性があります、写真を見て正しい向きに取り付けてください。 黄色い丸の部分は基板のパターンにハンダ付けします。赤い丸の部分は部品の足同士を接続するだけです。 1KΩ3本の足を接続した側は、次にトランジスタを載せるまでは宙ぶらりんのままでOKです。 ![]() 黄色い丸の部分はダイオードの足と同じところにハンダ付けします。赤い丸の部分は部品の足同士を接続するだけです。 ダイオード・電解コンデンサの側は2本の足が同じ方向に伸びていますのでショートしないよう注意してください。 ![]() どちらもパターンカットをした部分のすぐ横にハンダ付けしますので、カットした部分をハンダで繋いでしまわないよう細心の注意を払ってください。 接続間違いや、違う配線・ハンダ付けポイントとのショートが無いかよく確かめたら基板の改造は終了です。 電池を仮配線で接続してみて、スイッチ部のパターンにゴムスイッチ(元からある部品)を押し付けて点灯や点滅するかのテストをします。 ここまで 2007/1/8 追加
![]() 電池ボックスの部分に部品がはみ出たり、追加回路が厚すぎてちゃんとネジ止めできない、などの不都合も全くありません。 改造した部分が全く見えないので、電池を交換する為にフタを開けても改造機だとは気付かないほどです。
![]() テストはブレッドボード上で部品定数の確認などを行っている状態で行いました。 ● 改造前 ![]() 「常時点灯」状態のパルス点灯の様子を測定しました。 約6.6msec周期(約151Hz)で、約1.9msecの間点灯するパルスとなっています。 LEDにはほぼ電池の電圧しかかかっていません(約2.9V)。白色LEDはなんとか点灯はしますが本来の眩しい位の輝きではありません。 ※ OFF期間に波形が乱れているのはオープンコレクタの為OFF時はLEDは完全に浮いていて、オシロが高感度すぎて周辺ノイズを拾っているからです。 ● 改造後 ![]() 常時点灯では同時に5つのLEDを点灯していますので、100μF程度ではあまりパワーが上がらずに3.1V程度となっている様子がわかります。 わずかな電圧上昇ですが、LEDの定格電流を流す電圧範囲に入っていますので明るさは2.9Vの時とは断然違い明るくなっています。 ● コンデンサ電圧 ![]() 今回の充電周期では約0.9Vまで充電したところでLEDと接続され、約0.3Vまで放電しています。 この充電量はコンデンサの容量と制限抵抗の値で変わります。 ● 点滅 ※ 横幅が20msec/DIVと上の写真の10倍です。 ![]() パッ‥‥パッ‥‥パッ‥‥と間隔を開けて点滅するのでLEDが消灯している時間が長くコンデンサに充電された電圧も高くなっています。 約3.6V(観測波形の外側での実測値)と白色LEDを点灯させるのに十分な電圧まで上がっていますので、この点滅周期ではLEDが眩しすぎるくらいの明るさに光ります。 しかし点灯時間は約50msecありますが、10msecも持たずにコンデンサは放電しきってしまっています。 このように常時点滅のような約6.6msecの発振ではなく、コンデンサに充電した電気を単発で放電してしまうような光らせ方だと「光った瞬間はすごく眩しく、しかし瞬時に暗くなってしまう」という光り方をします。 点滅パターンでは『目立つことが目的』ですから、各点滅サイクルで一瞬でも強力に光れば人間の目の残像減少で強力な光の印象が続きますので、このような瞬間だけの昇圧でも効果は絶大です。 パパパパパパ…と速い点滅の場合はこの最高の明るさでの瞬時発光がずっと続いているように見えて、それはもう眩しくて直視できません。 ● 消費電流 ![]() 常時点灯(発振)状態で、LED点灯時は60〜82mA、LED消灯・コンデンサ充電時で10〜13mA流れています。 点灯中にLED一個には約十数mAが流れているようですので、完全にフル発光しているわけではありませんが、直接電池電圧3Vで光らせるより目視の感覚的には2〜3倍明るく光っています。 しかしこれはあくまで「目印ランプ」としてこのランプを人間の目が直接見た時の明るさの感覚です。(正面から直接は見ないでください) 「照明」としてこの改造ライトで室内や道路の足元を照らした場合はやはり白色LEDを電流不足で光らせている程度の明るさにしか照らせません。 改造には超高輝度LEDを使用しましたが、照明としての明るさでは100円ショップのLED一個のキーホルダーライトと同じくらいです。 自転車の目印灯として使用するには眩しすぎるくらいの明るさですが、暗闇走行で路面を照らすライトとしては使用できないレベルです。安全のため、元の「目印灯」(無灯火防止の前照灯程度)としての利用目的以外には使わないようにしましょう。
常時点灯の際に発振(パルス点灯)させていて『暗い』というマイナスポイントのあった自転車ランプを、その発振を「チャージポンプの発信源に流用してしまう」という発想の転換をされた木下様のアイデアには敬意を表します。
改良する為にメールのやりとりをしている間にも他の機器の改造・流用ネタをお教え頂いたりと「技術交換」とでも申しましょうか、同じように電子回路を弄ってる者同士で楽しい時間を過ごさせて頂くことができました。 木下様、本当にありがとうございます。 電子回路の可能性と、おバカな改造には「これで決まり!」という絶対の正解はありません。 技術者が何人も居れば出て来る答えも沢山あります。 この記事を読まれている皆さんもぜひ色々な改造や自作回路を製作して、電子のパズルを楽しんでください! 記事掲載: 2006/12/7 追加更新: 2007/ 1/8
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