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![]() ![]() ストップウォッチ時間計測アダプター の製作 ( 今回予算 約1300円 ) * 記事を掲載 2010/7/21
タイマー関係の回路を作ったとき、その回路がどの程度の時間働くのか、また時間調節のVRの可変範囲が設計通りになっているのかはタイマーを実際に働かせて、その時間を計測しなければなりません。 数分以内のタイマーならじっと見ていてストップウォッチを自分の手で操作すれば測れますが、時間が30分以上などになるとずっと見ているわけにもゆかず、タイマー回路中のコンデンサ電圧などを測りながらあとだいたい何分くらいで終了するか予測しつつ、終了電圧近くになったらやっぱりじーっと見つめながらタイマー切れになるタイミングでストップウォッチのボタンを押したりとかなり大変なことになります。 そこで、そういうタイマー回路などの動作時間をストップウォッチで測るとき、人間が操作しなくても自動的にストップウオッチをスタート/ストップしてくれる計測アダプターを作ってしまいましょう。 じーーーっと見つめていなくても、寝ていてもちゃんと時間を測ってくれます(^^;
まずは、タイマー回路などがいつ動作しているかどうかを知る必要があります。
たいていのタイマー回路には動作中にONになるかOFFになるかの電圧出力またはそういうロジックになっている部分がありますから、そこから信号をもらってタイマー動作中を知るようにします。 しかし、一口にタイマー回路といっても乾電池使用で電源電圧が3V程度のものから、自動車用など12Vで動作するもの、FA機器などで24Vくらいの物まで様々です。(今回は24Vを超える物は対象にしません) どの電源電圧のタイマー回路でも、動作表示用LEDの点灯またはトランジスタの駆動用に電圧が出力される点はあるはずですから、そこから10mA程度以下の信号をもらい、DC3V〜24Vくらいの範囲のどの電圧でもこちらの回路が過電圧で壊れたりせず、かつ電圧によってスイッチ切り替えなどの面倒も無く、スイッチ操作を間違って受信回路を壊してしまう事も無い安全で便利な回路にしましょう。 そのために、受信部はフォトカプラを使用して、フォトカプラのLEDを定電流ダイオードで駆動することで入力電圧に関係なく一定の電流しか流さず、フォトカプラを壊さずにDC3V〜24Vの間のどの電圧でも反応するようにします。 次に、ストップウォッチのボタンを自動操作するしくみを考えます。 ![]() ※ タイマーが何度も動作する場合はそのつど繰り返し同じ操作をして、出力がON(またはOFF)の合計時間を計測します。 タイマーの出力状態を知る電圧出力でそのままストップウォッチのボタンを押しても、タイマー動作中はボタンを押しっぱなしになりスタートはしますが、タイマー動作終了時にはボタンを離すだけで計測は停止しません。 正しく「タイマーが動作開始したとき」「タイマーの動作が終了したとき」に人間がするようにそれぞれ一回、チョンとボタンを押す操作を自動的に行う必要があります。 ![]() よく使う74HC221などのワンショットタイマー回路ICを使えば容易に作れますね。 「タイマーの動作が終了したとき」、これも入力信号がHからLに変わった時ととらえれば、「入力信号がHからLに変わった事(ネガティブエッジ)を検出して、ストップウォッチのボタンをチョンと押すワンショットタイマー回路」を作れば、タイマー動作終了でストップウォッチの計測を終了できそうです。 これも74HC221などのワンショットタイマー回路ICではポジティブエッジ入力とネガティブエッジ入力の両方を備えていますし、IC一個にワンショットタイマー回路が2回路入っていますからスタート/トップのそれぞれの検出・ワンショット回路2系統をIC一個で済ませられそうです。 スタート/ストップの各検出回路・ワンショットタイマーの出力のどちらか片方でも働けば、ワンショットタイマー時間だけストップウォッチのボタンを押せばいいだけなので、各タイマーの出力でORをとってトランジスタでも働かせればいいでしょう。 ワンショットタイマー回路が2個入ったICを使えばとてもカンタンにできそうです。 しかし、この方法だと2つのワンショットタイマー回路を使うので、ワンショット時間も2箇所調節する必要があり、ストップウォッチのボタンを押すのにスタート時とストップ時で特別にワンショット時間を変える必要もありません。 ![]() ![]() 単純なORゲートは、A・Bの入力のいずれかが1であれば出力Yが1になります。A・B入力の両方が1でもOR(どちらか片方でも)論理で出力は1になります。 ところがEX-ORゲートはExclusive(排他的)論理で「A・B両方が1の場合は出力Yは0」という特殊なORゲートです。 つまり「A・B入力が一致したときは0」「不一致の場合は1」という不一致検出回路として使用します。 ![]() A・B入力のうち片側の信号(図ではB入力)をC・Rによる遅延回路(積分回路)で遅らせることで、片側の入力の変化が時間的に遅れることで正規の入力信号(A入力)とは不一致となる時間が発生し、それを不一致検出してやれば遅延回路で信号を遅らせた時間の間だけ不一致信号が現れ、入力信号が変化した時に不一致を起こす時間だけ出力パルスを発生することができます。 これがEX-ORゲートによる変化検出回路の理論です。 タイマー回路を2つも使わず、入力信号が変化する点でだけ必要なワンショットパルスを出力する回路が、たったこれだけの部品で実現できるのですからたいへん便利です。 ストップウォッチのスイッチを押す回路は、この変化点を検出したパルスでトランジスタで接点をONするだけで済みます。
回路図です。
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● 入力カップリング ![]() 10mAの定電流ダイオード(CRD) E-103を使用して電流制限し、フォトカプラTLP521-1のLEDを点灯させます。 定電流ダイオードの働きで、入力電圧は約3V〜30Vの間で使用できます。 実際に定電流ダイオードが表記通りの電流を流すにはダイオード両端電圧がある一定の電圧近くである必要がありますが、この回路ではそこまで厳密に一定の電流がほしいのではなく、「高い入力電圧でもLEDを壊さずに点灯させる」ことのほうに重きを置いていますので、入力電圧が3V程度では10mAも流れませんがじゅうぶんにフォトカプラ内のLEDが点灯して動作しますので大丈夫です。 フォトカプラの出力はEX-ORゲートをバッファにして整形します。 入力がONの間はLED1「入力応答」が点灯します。 ● 変化点検出回路 ![]() EX-ORゲートICは74HC86を使用します。 片側入力の遅延時間はCRの値で決まります。計算式は・・・ T = 約0.75 × C × R
となり、C=1μF、R=100KΩですから遅延時間(発生するパルス)は約75msecです。 変化パルスを出力している間(約75msec)はLED2「変化検出」が点灯します。 一瞬ピカッと光る感じです。 ● 出力回路 ![]() 発生した変化点パルスでトランジスタ2SC1815を駆動し、ストップウォッチのスイッチをON/OFFします。 ● 電源 ![]() 電源は乾電池2本の3Vです。 この回路はLEDを光らせる以外にはほとんど電気を食いませんし、大きなパワーも必要ないので単四乾電池を2本使用します。今回は組み込むケースのサイズの問題もありますので・・・。 皆さんがお作りになる場合には単四電池にこだわる必要はありません。単三電池でも結構です。 ![]() ![]() ストップウオッチのスタート/ストップボタン(スイッチ)を本回路でON/OFFするために、ストップウオッチを分解して内部のスイッチまたは接点から配線を引き出す必要があります。 今回使用した100円ショップのストップウォッチでは右の写真のような位置の基板パターンから配線しました。 スイッチ接点には極性(+か−か)があり、トランジスタに逆につないでも動作しません。(壊れるわけではありません) リード線をハンダづけする際に、2本のリード線に整流用か小信号用シリコンダイオードを当ててみて、ストップウォッチが反応するか確かめて極性を確認しておくとよいでしょう。 別に、後で本回路と繋いで反応するほうにすればいいだけの話ではありますが・・・リード線を写真のような赤・黒などの色で使うと、極性と色が間違っていたらなんとなく気持ち悪いでしょ(^^; ● 使用部品 ![]()
回路はユニバーサル基板上に組み立てます。
![]() ![]() アクリルケースや、電子部品店で売られているプラスチックケースに入れてもいいですが、今回は基板サイズにあわせて自分でアクリル板(半透明スモーク)でケースも自作します。 電池ボックスはユニバーサル基板と同じサイズに切り出したアクリル板に貼り付けて下段(底板になる)に乗せています。 下段・上段間のスペーサーはは20mmです。 外からかぶせるケースを作ってネジで止めれば完成。 入力用ケーブルとストップウォッチはコネクタで簡単に脱着できます。ふだんはストップウォッチをこの回路につながずに、ただのストップウォッチとして利用することができます。そのためにケーブルは元々ストラップが付いていた位置に元のヒモのかわりになるようにつけています。 ![]() それと同時に入力の変化を検知してLED2「変化検出」が一瞬(75msec)ピカッと点灯します。 オープンコレクタ出力も75msecの間ONになりますから、接続しているストップウォッチは測定を開始します。ストップウォッチによりますが「ピッ」と音がして確認できます。 入力電圧を無くすとLED1「入力応答」が消灯します。 それと同時に入力の変化を検知してLED2「変化検出」が一瞬(75msec)ピカッと点灯します。 オープンコレクタ出力も75msecの間ONになりますから、接続しているストップウォッチは測定を停止します。ストップウォッチによりますが「ピッ」と音がして確認できます。 測定相手のタイマーが75msec未満の時間しか働かない場合はONとOFFが重なって一回のパルスしか出力できませんから、この回路の定数では最初計測可能時間は75msec以上です。 接続するストップウォッチのスイッチ反応動作により、もっと短いパルスでも動作するものもありますし、逆に動作が緩慢であまり短い時間ではボタンが反応しないような物もあるようです。 もしボタン操作パルスの時間を短くしたいなら、お使いのストップウォッチで正常に動作するかよく確認してください。 動作テストのために乾電池などを入力端子に接続する場合、手で接触させるとチャタリングが起きて一回の接触で何度もON/OFFしてしまって、出力パルスが何度も出てストップウォッチがバタバタと走ったり止まったりするかもしれません。 動作テストにタイマー回路などを接続せず、手で電池をつないだりするなら、チャタリング防止回路を繋ぐなどしないとテストにならないかもしれません。それほど敏感です。 ここまでの説明は「タイマーはONで有電圧、OFFで無電圧(またはGND)」となるタイマー装置に繋いだ場合の動作ですが、逆に「タイマーはOFFで有電圧、ONで無電圧(またはGND)」のような機種にも対応しています。 入力ケーブルをタイマーに接続したときにOFF時出力されている電圧に反応して一回反応パルスを出してストップウォッチが走り出してしまうかもしれませんが、ストップウォッチのRUN/STOPボタンで計測を止めてRESETスイッチでリセットしてやればいいだけです。
最短75msec以上〜ストップウォッチの最大計測時間未満であればどんなタイマー装置の時間でも計測できますから、自作するタイマー回路の測定・調整用以外にもいろいろな用途に使用できます。
日照計とつないで、「ある一定の明るさ以上でON」という出力回路の出力時間を測れば「一日の日照時間」を自動で測る装置にもなります。 冷蔵庫のドアと連動するスイッチとつないで「冷蔵庫のドアを開けていた時間を測る」装置にもなります。 パソコンの電源電圧を受けて「パソコンを何時間使っていたか」を測る装置にもなります。 パルス充電方式の充電器の充電表示LEDから信号を取れば、充電終了までに「実際に充電電流を流した時間」を測定でき、定電流充電値×時間で電池に流し込んだ総電流値を知ることができたりもします。 今回の製作物では「タイマー回路の製作時のテストでの時間測定用」として単四電池を使用していますが、今例にあげたように長時間・何日もずっと使用するなら電源はACアダプターなどで常に供給する必要はあります。さすがに単四電池では数日くらいで電池切れになってしまうでしょう。(LED1を無くしてしまえば入力確認はできませんが、かなり電池はながもちになります) 元の装置が何であれ、その装置が働いている(または休んでいる)時間を積算して計測できますから、応用次第で何にでも使える便利な時間測定装置です。
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